わたし、入院しています

急に入院した女の話

わたし、入院していますep.9

体調も落ち着いてきたので、生活サイクルがしっかりできてきた。
備忘録に1日のスケジュールざっくり書いておく。

5:15 起床(身支度したりごろごろ)
6:00ウォーキング、体重測定(毎日測って書くところがある)
6:30ストレッチ、筋トレ(軽〜く)
7:00勉強

8:00朝食

8:30ウォーキング、お風呂の予約
9:00作業時間(だいたい文章書くか、絵描くか、勉強)

12:00昼食

12:30ウォーキング
13:00作業時間(上に同じ)
16:30お風呂
17:00ストレッチ

18:00夕食

18:30ウォーキング
18:45勉強
19:30自由時間(ドラマ、映画見る)
21:00消灯

だいたいこんな感じ。
やたら細々ウォーキングが入ってるのは、食べたものを消化するためにすこし運動するのが一番良いことが分かったから。
軽く運動すると血流が良くなって胃の消化を助けるし、そのあと勉強なり作業なりに集中できる。

日中痛みやだるさで寝てることはもうほぼなくて、だいたいこのスケジュールで過ごしている。

多分コロナじゃなくて面会なんかがあればそんなことないんだろうけど、検査がなければほとんど毎日こんな感じ。

だいたい同じ人が、同じ時間にウォーキングしている。

いつ見ても歩いてる鉄人みたいなおじさんがいて、後で聞いたところによると一日25000歩も歩いてるんだそうだ。
それから常にリュックを背負って歩いてるおじいさんがいる。亀の甲羅みたいに綺麗なだ円形のリュックでゆっくり歩いている。負荷をかけるために背負ってるんだろうな。

BTSを聴きながら黙々と歩いてると、だんだん体が温まってくるのがわかる。すこし早めに歩いているので、息も上がってくる。

体が温まったところでストレッチと筋トレしてると、だいたい6:40ごろで日が昇る。それを見て部屋に帰って、スッキリした頭で勉強する…のが良いペース。

しかしその良いペース、あっさり2日で崩れることとなった。

Not Today聴いてる時、前を歩いているおじさんの横を追い越す形で通った時、おじさんがなんか言ってることに気づいた。

イヤホンはずしながら「はい?」と聞くと

「速いねえ、痛くないのぉ?」
「ああ、痛みは今もうなくて…」
「僕はねぇ(ゼェ)傷が痛くてねぇ(ハァ)、でもねぇ(ハァ)、一周、二周は辛くても、四周、五周とするとね、段々痛みを忘れてきてね(ゼェ)、もう一周頑張ろうと思うんだねぇ(ハァ)」

めちゃくちゃ息上がってる

「今何周目なんですか?」
「三周(ハァ)」
「一番辛い時ですね」
「そうなのぉ(ゼェ)」

そうしておじさんはそこから延々話続けて、その朝は歩きながらおじさんの自叙伝を聞くこととなった。

7時ごろに(6時から歩いてるからほぼ1時間)おじちゃんが看護師さんに

「相田さんおしっこのパック変えて良いですか〜」

と言われたところでお開きになったんだけど、話の佳境(事業後継者をどうするか問題の途中でめっちゃ良いところだった)だったので、

「じゃまた明日〜!」

と言って部屋に帰った。

そして、その日から毎朝一緒に歩く事になった。
歩くペースはだいぶゆっくりだけど
おじちゃんは敏腕営業マンだっただけあって話が面白く、ほっぺたが痛いぐらいずっと笑ってる。

せっかくできたペースが崩れるなぁとすこし残念な気持ちにもなったけど、これも何かの縁だしそれはそれで良いか、という気持ちになっている。

そして検温にくる看護師さんや担当医に
「あれ?お知り合いですか?」
と言われる…

痛みの山もこえて、症状もおちついて、数値も安定してきた。
入院生活後半戦に入ったけど、いろんな理由で飽きなそうです。

つづく